ヘルスリテラシーの研究を始める前、正直病気になるのも健康なのも運だと思っていました。自分ではどうしようもない、そう思っていました。でも、このグラフをみてどうやらそれは違うらしいと思い始めました。
そのグラフとは、2007年にNew England Journal of Medicineという医学領域でのトップともいえる雑誌に載っていた論文に掲載されていたグラフです*。寿命を全うしていない死亡に影響する要因を書いてくれています。このグラフをみて一番大きいものはなんでしょうか。そうなんです。私たちの行動パターンなんです。その次に遺伝的要因、そして、社会的環境という順番です。*Steven A. Schroeder, N Engl J Med 2007;357:1221-8
ここで、それぞれの要素が自分で決められるかどうかをみてみましょう。
行動パターン:社会の決まりなど社会の影響は大きいですが、基本的には自分で決められる
社会環境:住む場所や、属する組織を自分で選ぶことで一部決められる
環境への露出:住む場所や、属する組織を自分で選ぶことで一部決められる
ヘルスケア:住む国を変えれば変えられるけれど、なかなか難しい
遺伝:自分では決められない
こうしてみてみると、自分の健康、病気になるかどうかって。実は半分以上は自分で決めているんだなって思いますよね。
行動しないと健康になれない
「ヘルスリテラシー」というと、一番多くいただくコメントが「インターネットが普及して怪しい情報も増えましたからね。これからますます重要になりますよね」ということです。よくみなさんが持つイメージとして、健康・医療の正しい情報を選別する力、と思う方が多いようです。それももちろん大切です。根も葉もない情報に振り回されて命を落とす人だっています。
でも声を大にして伝えたいことは、情報が選別できても「行動」しないと健康になれないということです。例えば、「タバコは体に悪い」と知っていてもタバコをやめる、タバコを吸っている人から遠ざからない限りタバコの体への影響は取り除けないですよね。
ヘルスリテラシーの定義は使う方、その状況によっていろいろな使われ方をしているのが現状です。中でも情報の入手や理解として使われている方が多いと思います。しかし、女性の健康のことでいうと、情報の入手にもハードルがありますが、行動のところに大きなハードルがあると私は考えています。このハードルについてはまたお伝えしていきますね。
(文章 北 奈央子)
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